高価格帯の商品を扱うメーカーの広報担当者にとって、価格に見合った価値をどのように消費者に伝えるかは大きな課題です。このような場合、ストーリーテリングを活用することで、商品の魅力を効果的に伝え、売上拡大や販路拡大につなげることが可能です。
ストーリーテリングとは
プロモーション手法の一つで、伝えたいメッセージやコンセプトを物語として語ることで、聞き手の共感や理解を深め、記憶に残りやすくする手法です。単なる情報伝達ではなく、体験談やエピソードを通じて感情に訴えることで、聞き手の心を動かすことができます。
🚩なぜストーリーテリングが有効なのか?
人は物語に感情移入しやすく、記憶にも残りやすい傾向があります。スタンフォード大学の研究によれば、ストーリーを交えた情報は通常の22倍も記憶に残りやすいとされています。また、感情的なつながりを築くことで、ブランドへの信頼感や親近感を高めることができます。
ストーリーテリングの実例
今、店舗からオレンジジュースがなくなってきているのはご存じでしょうか。
海外にあるオレンジの樹が病気になってしまい、輸入できるオレンジが減っているんです。
えひめ飲料の「ポンジュース」は果汁を100%使用、
愛媛県産のみかんと海外産のオレンジをブレンドして製造しています。
しかし近年、上記の理由で輸入オレンジの価格が高騰し、値上げはまぬがれない状況に。
厳しい状況でもポンジュースを"やめるわけにはいかない理由"がえひめ飲料にはありました。
ポンジュースに使っている愛媛のみかんは、スーパーに並べられない規格外品を中心に使用しており、愛媛の農家の経営に貢献してきました。
えひめ飲料は、愛媛のかんきつ産業を背負っているからこそ、ポンジュースを作り続ける必要がありました。
消費者にずっとおいしく飲んでもらうためにも、
「こだわりは、まじめです。」のコーポレートメッセージどおり、生産方法にもこだわっています。
みかんをブレンドする際は、季節や生産場所によって味が一つ一つ変わるみかんを、官能検査(実際に人が飲んでチェックする検査)によってその調合を行っているのです。
さらに、2024年にはまろやかな味にリニューアルも行いました。
国民に親しまれ続けるポンジュースを作ることで、愛媛のみかん産業を支える、そんな使命感がポンジュース製造の裏側にありました。
ストーリーテリングのポイント
このえひめ飲料様の映像を例にとると、ストーリーテリングのポイントが見えてきます。
1. 時代背景と課題から物語を始める
▶ えひめ飲料様は、オレンジジュースの価格高騰・供給難という“今”の社会的背景を冒頭で描いています。
まず、今の社会・業界で起きている「困難・変化」を提示し、その中で自社の挑戦や存在価値を伝えると興味を惹くことができます。
例:「○○の需要が減少する中、私たちはある決断をしました。」
2. 創業の想いを、使命として語る
▶ ポンジュース誕生の背景には、「農家の生活を支えたい」という創業者の強い想いがありました。
創業者や先人の志や社会的使命を語り、その精神が今も引き継がれ事業や製品に反映されていることが、他にない差別化ポイントになります。
例:「この商品は、創業者が○○という願いで立ち上げたものでした。」
3. 第三者視点からの言葉を入れる
▶ 地元のかんきつ農家様のコメントで愛媛のみかん産業に貢献していること、深い関係性であることが分かります。
製品の背景にある人々──生産者、職人、専門家などの姿や声を見せることで、商品の背景にある人間味が感じられ共感が生まれます。
例:「この新商品は、10年以上試作を重ねた開発チームの“執念”から生まれました。」
4. “手間”や“こだわり”を具体的に描写する
▶ ポンジュースでは、手作業での選別、官能検査、味のブレンドといった手間をリアルに見せています。
製品の工程の中で、「普通なら省略されがちだが、あえて行っている手間・工夫」を映像や言葉で具体的に伝えることで、商品の付加価値になります。
例:「この一滴は、全て人の目と舌で確かめたものだけを使っています。」
まとめ
あらためて、ポンジュースのケースに学ぶストーリーテリングのポイントをまとめました。
- 時代背景と課題から物語を始める
- 創業の想いを、使命として語る
- 第三者視点からの言葉を入れる
- “手間”や“こだわり”を具体的に描写する
高価格帯の商品でも、ストーリーテリングを活用することで、消費者に付加価値を伝え、共感を得ることが可能です。商品の背景や開発者の想い、顧客の体験などを物語として伝えることで、ブランドへの信頼感や親近感を高め、売上や販路の拡大につなげることができます。
最後に
下記のような方は、ぜひストーリーテリングに挑戦してみてください。
- 高価格帯の製品を市場に投入したい
- 競争が激化している業界、または新規参入する
- 社会貢献やCSR活動を強調したい
商品や会社の魅力をより多くの人に伝えるための一助となるはずです!
今回ご紹介した動画>>
日経CNBC「ものづくりの挑人たち」
ー挑戦する人、すなわち挑人。
さまざまな分野で挑戦を続ける挑人たち。優れた商品やサービスの裏側には、秘められた開発ストーリーがあった。新しいことに挑戦しつづける情熱や戦略、各分野の挑人たちをドキュメンタリータッチでご紹介します。
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